M 様投稿作品










心の絆は想いの絆、巡り巡って時を駆ける。

その物語は伝えられ、物語は繰り返す。





 名も無き昔話 ふたつめ





昔々あるところに、とても仲のいい犬耳っ子とご主人様がいました。

その犬耳っ子は、ご主人様に正式に仕える身ではありませんでしたが、

毎日自分のところに来てくれるその人を主人と慕い、

周囲の人も二人を微笑ましく思ってくれていました。

幸せに流れ行く時間の中、いつしか二人は恋に落ちました。

静かに輝く月明かりの下で、二人は約束をしました。

いつか二人で一緒に暮らそう、と……

しかし、その約束は果たされませんでした。

犬耳っ子は、自分の死期が近いことを悟ったのです。

一人寂しく最後の月を待つ犬耳っ子の下に、思いもかけず、ご主人様は駆けつけました。

犬耳っ子は、最後に大好きな人と一緒に月を見られることを感謝し、こんな話をしました。

『ご主人様は昔、どこかの犬に優しくしたことがあったのでしょうね。

 だからわたしは、ご主人様のそばにいたいと思ったのです』

犬耳っ子は最後に、ご主人様への感謝の言葉を残してこの世を去りました。

残されたご主人様は、突然降り始めた冷たい雨に打たれながら、ただただ涙しました。

犬耳っ子の亡骸を、ずっと抱きしめながら。

犬耳っ子との思い出を、ずっと胸に抱きしめながら。

ご主人様は犬耳っ子に渡せなかったプレゼントと、

犬耳っ子が残した拙い手紙を大切にしまい、

永遠に変わらぬ愛を貫きました。

そして、時は流れ……



















「おーい! そろそろ帰るぞー!」

夕暮れの公園に、男性の声が響いた。

「あ、はーい!」

ベンチに座り、子供たちにお話を聞かせていた少女は返事をして立ち上がる。

「えー? もう行っちゃうの?」

「お話の続きはー?」

ぐずる子供たちに「ごめんね。続きはまた今度」と言って、少女は「ばいばい」と手を振る。

「ばいばーい!」

子供たちの元気な声を後に、

少女は緩くウェーブのかかった髪と白いワンピースの裾を揺らして、

小走りに男性へと近寄った。

とその時、

「えいっ!」

横の茂みから突然幼い女の子が飛び出し少女に飛びついた。

「きゃあっ!?」

少女は驚きながらもどうにか抱きとめる。

「えへへ〜、お姉ちゃんびっくりした?」

「止めたんだけど、びっくりさせたいって聞かなくってな」

腕の中で満面の笑みを浮かべる女の子と、頬をかきながら苦笑を浮かべる男性。

その様子に、少女はくすりと笑みを漏らした。

三人は仲良く手を繋いで歩き出す。帰るべき自分たちの家へ。

夕日が三人の影を長く伸ばす。

影の中でも、少女と女の子の尻尾はふりふりゆらゆら揺れていた。




















それはいつの時の流れの中だろうか。

いや、いつであっても構わない。

時が巡り、想いも巡る。

巡り巡って再び辿り着く。

幸福な時間の中へと。

幸福な想いの中へと。

いくつの昔話が紡がれようとも、それだけは変わらない。

現在が終わろうとも、

次の時間へ。

更なる未来へ。

想いは重なり、重ねられていく。

永遠に……










――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

<あとがき>

ど〜もご機嫌ようです。
『名も無き昔話 ふたつめ』いかがでしたでしょうか?
何と言いますか。ぴゅあぴゅあで最もいいシーンを抜粋して変な風にいじくっちゃったような気がして、こんな文章を受け入れてもらえるか、いつものことながらビクビクしてます。
まあいつものごとくノリと勢いだけで書いたものなのでご容赦ください……(土下座)

以上、「さち、お誕生日おめでと〜〜♪」と叫んでお茶を濁そうとしているMでした♪
でわでわ〜♪

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――



△戻る